講演情報
[G-P-45]陸中大原地域東部における前期白亜紀貫入岩類のジルコンU–Pb年代
*鈴木 敬介1 (1. 産業技術総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門)
キーワード:
北上山地、前期白亜紀、火成岩、ジルコンU–Pb年代
東北日本の北上山地には,前期白亜紀火成岩類が広く分布する.これらの岩石は南部北上帯,根田茂帯,および北部北上帯を構成する古生代からジュラ紀の陸棚堆積岩類や付加体を広く覆うか,貫入している.特に,アダカイト質花崗岩類の分布規模は広く,それら岩体の空間スケールと年代極性との関係から,前期白亜紀の島弧火成活動やテクトニクスの変遷が議論されている[1, 2].
これに対し,アダカイト質花崗岩類よりも規模の小さい火成岩類については,年代・化学組成などの基礎データの収集が未だ遅れている場合も多い.中でも,北上山地南西部に位置する陸中大原地域では,従来,中央部に広く露出するアダカイト質花崗岩類(人首-千厩花崗岩体)を対象に年代・岩石学的研究が進められてきた一方,東部における安山岩,流紋岩,石英閃緑岩などの小規模な貫入岩類では同様の検討が行われておらず,アダカイト質火成活動との関連性はまだ十分に理解されていない.
本研究では,この課題の解決に向け,陸中大原地域東部における大中斉-関ノ沢地域から流紋岩試料2点,青金橋地域から石英閃緑岩試料1点を採取し,ジルコンU–Pb年代測定を行った.前者は121 Maの,後者は115 Maの加重平均年代(MSWD = 1.3–0.85)を示し,火成年代は前期白亜紀Aptianである[3].これらの岩石は共通して古生代(421 Maおよび293–269 Ma)のジルコンを含む.
本研究は,陸中大原地域東部の石炭系~ペルム系に貫入する流紋岩や石英閃緑岩が前期白亜紀Aptianの年代を有することを確認した.このうち,115 Maの石英閃緑岩は,人首-千厩花崗岩体から報告されているジルコンU–Pb年代(119–112 Ma[1, 2])と調和的であり,アダカイト質火成活動と何かしらの関係があるかもしれない.121 Maの流紋岩は同岩体の年代よりもやや古いが,流紋岩が花崗岩質マグマの残液部に関連することを考慮すると,この岩石も現状,人首-千厩花崗岩体と同時期の火成活動として解釈するのが妥当であろう.しかし,陸中大原地域南東部から千厩地域にかけては121 Maの角閃石K–Ar年代を有する安山岩質火山礫凝灰岩も認められ(新月層[4]),年代的には本研究で対象とした流紋岩と対応する.今後,これらの岩石について全岩化学分析も合わせさらに詳細な検討・比較を進めることで,相互の関連性が明らかになるだろう.
引用文献: [1] 土谷ほか (2015). 岩鉱, 44, 69–90. [2] Osozawa et al. (2019). J. Asian Earth Sci., 184, 103968. [3] Gradstein et al. (2020). Geologic time scale 2020. Elsevier, Amsterdam, 1357. [4] 竹内・御子柴 (2002). 地域地質研報 (5万分の1地質図幅). 産総研地調, 76p.
これに対し,アダカイト質花崗岩類よりも規模の小さい火成岩類については,年代・化学組成などの基礎データの収集が未だ遅れている場合も多い.中でも,北上山地南西部に位置する陸中大原地域では,従来,中央部に広く露出するアダカイト質花崗岩類(人首-千厩花崗岩体)を対象に年代・岩石学的研究が進められてきた一方,東部における安山岩,流紋岩,石英閃緑岩などの小規模な貫入岩類では同様の検討が行われておらず,アダカイト質火成活動との関連性はまだ十分に理解されていない.
本研究では,この課題の解決に向け,陸中大原地域東部における大中斉-関ノ沢地域から流紋岩試料2点,青金橋地域から石英閃緑岩試料1点を採取し,ジルコンU–Pb年代測定を行った.前者は121 Maの,後者は115 Maの加重平均年代(MSWD = 1.3–0.85)を示し,火成年代は前期白亜紀Aptianである[3].これらの岩石は共通して古生代(421 Maおよび293–269 Ma)のジルコンを含む.
本研究は,陸中大原地域東部の石炭系~ペルム系に貫入する流紋岩や石英閃緑岩が前期白亜紀Aptianの年代を有することを確認した.このうち,115 Maの石英閃緑岩は,人首-千厩花崗岩体から報告されているジルコンU–Pb年代(119–112 Ma[1, 2])と調和的であり,アダカイト質火成活動と何かしらの関係があるかもしれない.121 Maの流紋岩は同岩体の年代よりもやや古いが,流紋岩が花崗岩質マグマの残液部に関連することを考慮すると,この岩石も現状,人首-千厩花崗岩体と同時期の火成活動として解釈するのが妥当であろう.しかし,陸中大原地域南東部から千厩地域にかけては121 Maの角閃石K–Ar年代を有する安山岩質火山礫凝灰岩も認められ(新月層[4]),年代的には本研究で対象とした流紋岩と対応する.今後,これらの岩石について全岩化学分析も合わせさらに詳細な検討・比較を進めることで,相互の関連性が明らかになるだろう.
引用文献: [1] 土谷ほか (2015). 岩鉱, 44, 69–90. [2] Osozawa et al. (2019). J. Asian Earth Sci., 184, 103968. [3] Gradstein et al. (2020). Geologic time scale 2020. Elsevier, Amsterdam, 1357. [4] 竹内・御子柴 (2002). 地域地質研報 (5万分の1地質図幅). 産総研地調, 76p.
