講演情報

[T2-P-2]氷床・海水準変動に伴う南極沿岸域湖沼の水塊構造の変化

*石輪 健樹1,2、徳田 悠希3、香月 興太4、板木 拓也5、佐々木 聡史6、山﨑 開平7、大森 貴之8、奥野 淳一1,2、池原 実9、菅沼 悠介1,2 (1. 国立極地研究所、2. 総合研究大学院大学、3. 鳥取環境大学、4. 島根大学、5. 産業技術総合研究所、6. 群馬大学、7. タスマニア大学、8. 東京大学、9. 高知大学)
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キーワード:

南極氷床、湖底堆積物、完新世、氷床変動、海水準変動

温暖化による南極氷床融解に伴う海水準上昇が危惧されており、気候変動に対する南極氷床の応答の理解は喫緊の課題である。南極氷床は数年から数十万年の変動スケールを有しているが、衛星観測や海洋観測で把握できる時間スケールは数十年に限られる。そのため、数十年以上の時間スケールの変動を復元するには、堆積物や岩石などの地質試料の分析とモデルシミュレーションが主要なアプローチとなる。特に、南極沿岸域の湖底堆積物は海水準変動をはじめとする古環境の復元に有用な試料であり、東南極の宗谷海岸域では、海水準変動の復元や環境変化の復元に用いられてきた。しかし、南極沿岸域の一つの湖の詳細な古環境再構築に関する研究は少なく、海面変動などの外部要因に対する湖内の応答の違いを詳細な検討した研究は十分に進んでいない。東南極のリュツォ・ホルム湾のラングホブデに位置するぬるめ湖は海跡湖であり、最も近い氷床縁から約2 km離れた場所に位置する。第61次南極地域観測隊では異なる深度で4本の湖底堆積物コア試料が採取された。1つのコアは最深部の約16メートルで採取され、他のコアは浅い深度(5-8メートル)で採取された。本研究ではこれらの堆積物コアを用いて、氷床や海水準変動に伴う湖内の水塊構造の変化を復元することを目的とした。堆積相観察、XRFコアスキャナー分析、および珪藻分析を用いて堆積環境を復元し、放射性炭素年代測定により年代モデルを構築した。その結果、海水準変動に伴う湖周辺の地形変化が湖内の水塊構造を変化させ、氷床変動による淡水の流入が急激な水塊構造の変化の要因になったことが示唆された。本研究の結果は、南極の湖底堆積物コア試料を用いた氷床や海水準変動をはじめとする古環境の高精度復元に寄与するものである。

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