講演情報
[T2-P-4]マグマ溜り内でのジルコン成長:内部構造とU-Pb年代,チタン濃度,Th/Uの関係
*湯口 貴史1、遠藤 京香2、鈴木 哲士2、小北 康弘3、坂田 周平4、横山 立憲3、井村 匠2、大野 剛5、笹尾 英嗣3 (1. 熊本大学、2. 山形大学、3. 日本原子力研究開発機構、4. 東京大学地震研究所、5. 学習院大学)
キーワード:
マグマ溜りプロセス、3次元カソードルミネッセンスパターン、ジルコンU-Pb年代、チタン濃度、Th/U、久喜花崗岩体
本研究は,北上山地に分布する久喜花崗岩中のジルコン結晶の成長特性を,花崗岩質マグマ溜りプロセスの解明の鍵として報告を行う.岩石から分離したジルコン結晶の複数断面に対する解析と薄片中のジルコン結晶に対する解析の2つのアプローチを用い,①結晶の三次元的な内部構造の特徴,②その内部構造に関連したU-Pb年代,Ti濃度,Th/Uの変化,③マグマ溜りの中でのジルコン結晶と他の鉱物(黒雲母,石英,アルカリ長石)との結晶化順序を解明した.
ジルコンの大部分を占める組織は,低輝度で均一なコア(Low luminescence core: LLC)とオシラトリゾーニング(oscillatory zoning: OZ)からなる.LLCとOZから得られたU-Pb年代は約120 Maであり,これはSuzuki et al. (2024)と相違ない結果となった.LLCとOZの両者に誤差の範囲を超えた相違は認められない.ジルコンのTi濃度はTi-in-zircon温度計を用いることで,その結晶化温度を導出することができる(Ferriss et al., 2008).LLCは約900℃から800℃の温度条件で成長し,OZは 850℃から700℃の温度で成長した.Th/Uはマグマ溜り中の結晶分別の指標として用いることができる(Kirkland et al., 2021).LLCはOZよりも高いTh/Uを持つことから,マグマ溜りの冷却に伴う分別結晶の進行によって,LLCからOZに推移したことが示唆される.これらのことから,ジルコン結晶の成長に際して,マグマ温度の低下に伴う拡散速度の低減が,LLCを生成する反応律速型成長からOZを生成する拡散律速型成長への遷移の要因になったと解釈できる.
薄片中のジルコン分析では,異なった鉱物に包有されるジルコン結晶は,異なるTh/Uを持つことで特徴付けられる.包有される鉱物を考慮したジルコン結晶のTh/Uと結晶化温度の相違は,広い温度条件でのマグマ溜りプロセスにおける分別と鉱物の結晶化を解明する上で有用な手法となる.
<引用文献>
Ferriss, E.D.A., Essene, E.J., Becker, U., 2008. Computational study of the effect of pressure on the Ti-in-zircon geothermometer. Eur. J. Mineral. 20, 745–755. https://doi.org/10.1127/0935-1221/2008/0020-1860.
Kirkland, C.L., Yakymchuk, C., Olierook, H.K.H., Hartnady, M.I.H., Gardiner, N.J., Moyen, J.-F., Smithies, R.H., Szilas, K., Johnson, T.E., 2021. Theoretical versus empirical secular change in zircon composition. Earth Planet. Sci. Lett. 554, 116660. https://doi.org/10.1016/j.epsl.2020.116660.
Suzuki, S., Yuguchi, T., Ishiguro, K., Endo, K., Kato, A., Yokoyama, K., Ogita, Y., Yokoyama, T., Sakata, S., Ohno, T., Sasao, E., 2024. Petrography and geochronology of the Kuki granite, Kitakami Mountains, northeastern Japan: Shallow crustal intrusion and emplacement processes of granitic magma. J. Mineral. Petrol. Sci. 119:002. https://doi.org/10.2465/jmps.230807.
ジルコンの大部分を占める組織は,低輝度で均一なコア(Low luminescence core: LLC)とオシラトリゾーニング(oscillatory zoning: OZ)からなる.LLCとOZから得られたU-Pb年代は約120 Maであり,これはSuzuki et al. (2024)と相違ない結果となった.LLCとOZの両者に誤差の範囲を超えた相違は認められない.ジルコンのTi濃度はTi-in-zircon温度計を用いることで,その結晶化温度を導出することができる(Ferriss et al., 2008).LLCは約900℃から800℃の温度条件で成長し,OZは 850℃から700℃の温度で成長した.Th/Uはマグマ溜り中の結晶分別の指標として用いることができる(Kirkland et al., 2021).LLCはOZよりも高いTh/Uを持つことから,マグマ溜りの冷却に伴う分別結晶の進行によって,LLCからOZに推移したことが示唆される.これらのことから,ジルコン結晶の成長に際して,マグマ温度の低下に伴う拡散速度の低減が,LLCを生成する反応律速型成長からOZを生成する拡散律速型成長への遷移の要因になったと解釈できる.
薄片中のジルコン分析では,異なった鉱物に包有されるジルコン結晶は,異なるTh/Uを持つことで特徴付けられる.包有される鉱物を考慮したジルコン結晶のTh/Uと結晶化温度の相違は,広い温度条件でのマグマ溜りプロセスにおける分別と鉱物の結晶化を解明する上で有用な手法となる.
<引用文献>
Ferriss, E.D.A., Essene, E.J., Becker, U., 2008. Computational study of the effect of pressure on the Ti-in-zircon geothermometer. Eur. J. Mineral. 20, 745–755. https://doi.org/10.1127/0935-1221/2008/0020-1860.
Kirkland, C.L., Yakymchuk, C., Olierook, H.K.H., Hartnady, M.I.H., Gardiner, N.J., Moyen, J.-F., Smithies, R.H., Szilas, K., Johnson, T.E., 2021. Theoretical versus empirical secular change in zircon composition. Earth Planet. Sci. Lett. 554, 116660. https://doi.org/10.1016/j.epsl.2020.116660.
Suzuki, S., Yuguchi, T., Ishiguro, K., Endo, K., Kato, A., Yokoyama, K., Ogita, Y., Yokoyama, T., Sakata, S., Ohno, T., Sasao, E., 2024. Petrography and geochronology of the Kuki granite, Kitakami Mountains, northeastern Japan: Shallow crustal intrusion and emplacement processes of granitic magma. J. Mineral. Petrol. Sci. 119:002. https://doi.org/10.2465/jmps.230807.
