講演情報

[SYB4-01]国産チーズスターターの開発と利用状況

*小林 美穂1 (1. 農研機構 食品研究部門)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

乳酸菌、チーズ熟成、チーズスターター培養物

【講演者の紹介】氏名(ふりがな):小林 美穂(こばやし みほ)略歴:宇都宮大学大学院農学研究科修士課程修了.農林水産省畜産試験場(現 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)畜産研究部門)を経て,現在,農研機構 食品研究部門 食品加工・素材研究領域バイオ素材開発グループ 上級研究員.博士(農学)

酪農家などがチーズ製造に取り組む際には,原料乳の生産地や乳牛の飼養方法などが製品差別化の要素となりうる.しかしチーズの製造に不可欠なチーズスターター(乳酸生成を担う乳酸菌や,チーズの種類や特徴を決定づける外観,味,香り,食感をもたらす乳酸菌など発酵微生物)は輸入市販品であり,外国産ナチュラルチーズとの明確な差別化が難しい.市販チーズスターターは,乳酸菌他チーズ製造に特化した数種類の発酵用微生物の混合で,それらの微生物は伝統的なチーズを分離源とし,その構成は目的とする種類のチーズを安定して製造できる菌叢となっている.スターター由来の乳酸菌は,チーズ製造の初期には乳酸発酵により原料乳のpHを低下させ,後には菌体内外の酵素によって乳成分の低分子化に働きチーズの熟成に寄与する.一方,チーズの熟成には,スターター由来ではない非スターター性乳酸菌も関与する.非スターター性乳酸菌は,原料乳や製造環境に由来し,熟成中に増殖してチーズの主要な菌叢となり品質に影響することから,フレーバー改善や特徴の付与,あるいは熟成促進効果をねらい,品質の良い熟成チーズから分離した非スターター性乳酸菌を,補助スターターとして乳発酵用スターター(メインスターター)に併用する試みが様々報告されている.しかし乳系食品以外から分離した乳酸菌のチーズスターター利用は,プロバイオティック機能に着目した機能性チーズ開発の目的以外での報告例は少ない.しかしそのような乳酸菌の菌体酵素活性は,チーズ由来菌のものとは異なり,チーズ製造に利用できれば多面的な差別化特徴の付与が期待できる.日本各地には,様々な漬物や,味噌,醤油,日本酒など乳酸菌が関わる伝統的な発酵食品があり,それらからは食経験のある乳酸菌を分離することができる.発酵食品中の乳酸菌叢は,各々の発酵食品によって典型的な菌種が占有しているが,熟成チーズから分離実績の高いLacticaseibacillus casei, Lacticaseibacillus paracasei, Lacticaseibacillus rhamnosus, Latilactobacillus curvatus, Lactiplantibacillus plantarumなどの乳酸桿菌は,チーズ以外の国産発酵食品からもしばしば分離される.講演者らは2017年から,北海道および栃木県の公設試等とコンソーシアムを形成して「国産スターターを用いたブランドチーズ製造技術の開発 “Jチーズプロジェクト”」を実施した.プロジェクトでは,地場食品190点から分離した676菌株の“ご当地乳酸菌”から,非スターター性乳酸菌種を優先的に選抜し,ゴーダチーズの旨味増強や熟成促進効果を指標として4種の乳酸菌を選抜し,補助スターター用途の国産チーズスターター(Jチーズスターターと呼称)を開発した.Jチーズスターターの添加効果は,遊離アミノ酸分析,揮発成分分析,味覚センサー試験などにより確認したほか,消費者嗜好調査においても好ましい評価を得た.現在Jチーズスターターは普及を進めており,本講演では,国産チーズスターター開発のプロセスとともに,社会実装に向けた取り組みについても解説する.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン